府中刑務所内の自動車整備工場で車検をする受刑者ら=2024年4月15日午後2時21分、東京都府中市、黒田早織撮影
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 自動車整備士やクレーン運転士、理容師――。刑務所では、受刑者に資格や技能を習得させるさまざまな職業訓練が行われている。出所後の就労を促進し、再犯を防ぐためだ。「立ち直り」に重点を置く「拘禁刑」が来年6月に導入される中、実効性をどう高めていくかが課題となりそうだ。

 4月中旬、府中刑務所(東京都府中市)を訪ねると、26万平方メートルと広大な敷地の一角に、自動車整備工場があった。この日は8台の車が入庫。上下緑色の作業衣に白いヘルメットをかぶった男性受刑者らが、持ち上げられた車の下に入り込み、黙々と作業をしていた。

 そのうちの1人は、40代の男性だった。給料をめぐるトラブルで失職したが、妻に言い出せず、知り合いに相談した。「なんか仕事ないか」。依頼をきっかけに強盗事件の共犯に誘われ、断れなくなった。逮捕され、強盗致傷罪で懲役12年の有罪判決を受け、受刑していると話した。

 出所後、再び仕事のことで困りたくはないと自動車整備士の資格試験に挑み、今年3月に合格した。「出所後の新たな勤め先に少しは迷惑をかけずにすむんじゃないか」とも考えたという。

 犯罪白書によると、2022年に刑務所に再入所した8180人のうち7割は無職だった。安定した仕事がなく、経済的な困窮が引き金となり、再犯に及ぶ傾向がある。刑務所は「再犯を防ぐため、就労につながる知識や技能、免許や資格の取得が重要」として、職業訓練に力を入れている。

 府中刑務所の車検もその一環だ。自動車整備士の資格を取得できる職業訓練を50年以上前から実施。現在は30~50代の10人が従事し、車検以外にも、洗車や板金塗装など自動車整備全般の作業を手がける。うち男性を含む4人は、今年3月に資格を取ったという。

 年間受付台数は300台以上。代車がないなどの制約がある上、民間の経営を圧迫しないような価格を設定している。だが、刑務所の作業専門官がつきっきりで技術を教え、車内の掃除やさび止め塗装なども行っており、リピーターが多いという。(黒田早織)

 法務省矯正局によると、職業訓練で取得できる資格や技能講習は約100種類ある。22年度に取得したのは延べ6491人。今年度も約4億4千万円の予算が計上されている。課題は、その実効性だ。

記事の後半では、刑務所で行われている主な職業訓練ごとに、出所後の就労状況を調べた法務省の検証結果も紹介しています。

 法務省は「出所後の生活を刑…

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